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ここは衛星が、日常から非日常へ逃げ込んだついでに 何か書いていく場所です。 そして、過去と向き合い、未来のために己をさらけ出す場所でもあります……
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◆『一万回のくちづけを』      1  序章
 


 永遠に終らないと思っていた夢から覚めて、
 最初に目に入ったのは天井ではなく少女。

 その少女は僕に口付けを……

 まるで王子様のキスで眠りから覚めた眠り姫の様な気分を味わったが、
 そもそもなぜ自分が眠っていたのかもわからない。

 さっきまで見ていた 終ることのない夢も 今この時も徐々に忘れつつある。

 それでも所々覚えてはいる。

 大切な誰かとの帰り道、聴こえてきた歌声、そして引かれそうになる少女。

 とっさに僕は飛び出したけれど……

 夢はそこで終わる。

 
 


何回も助けようとして、

 何回も助けることができない夢……   
       
 そんな悪夢といって良いような夢の連鎖を終らせてくれた女の子……

 なぜか、知ってる気がする女の子……

 僕の物語のは、

 彼女の口付けで
 再び動き出したのだ……




 


 




美浜 ゆずの場合

 初めて出会ったとき、ボクは公園の隅っこで泣いていた。

 父と母が別れたその日。

 何がなんだか分からなくなってボクは家を飛び出した。

 ただ泣きじゃくるしかないボクに手を差し伸べてくれたのがキミ。

 その手のおかげで私は泣く必要が無くなった。

 キミと遊んでいる間は一人じゃなかったから。

 キミが自分の事を「ボク」と呼ぶから、ボクも自分をそう呼ぶことにした。

 あのころ、ボクにとって、キミがすべてだった。

 でも、それすらも、ボクの前から消え去る事になった……

 突然決まった海外への赴任。

 もう二度と会えないと思っていた。

 でも、神様は再びボクをキミに会わせてくれた。

 たとえキミがもう二度と目覚めないのだとしても、
 ボクの気持ちは、もう……止められない。






相沢 碧の場合

 ずっと一緒だった。

 気づいたときいはあなたは私のそばにいた。

 それが当たり前だった。

 ずっと、ずっとそんな当たり前がつづくとおもっていた。

 子供ながらの約束。

 その直後に私は何もかも失った。

 それでも神様は私に奇跡を与えてくれた。

 ただし、あなたは私のことを覚えてはい無い。

 たとえ、あなたが私のことを忘れてしまったとしても。

 私はあなたを忘れない。

 ずっと、ずっと愛してる。

 でもこの気持ちはきっと届く事は無いだろう。

 忘れられてしまった約束も二度と果たされる事はない。

 それでも、私は笑顔を絶やさないでいよう。

 あなたのために。









 



藤崎 葉月の場合


 運命に分かれ道があるのだとしたら、きっと、

 自分にとってあの日がそうだったのだろう。

 自分の身代わりとなった男の子。

 自分の人生はもう自分一人のものではなくなった。

 教えてもらったおまじない。

 最初は信じてた。
 でも今はありえないと分かっている。

 彼が、こんな事で目を覚ます事はないと。

 それでもやめるわけにはいかないかった。

 これは償いであり、願望。

 神様の気まぐれでいつかきっと目覚めてくれる。

 そう信じるしか、自分には道がない。

 あと、あと一回。

 すべては明日。明日になれば、また私の時間は動き出す。

 きっと。

 そう信じてきたから。それが自分にとってすべてだったから。

 いつものようにゆっくりと、彼の病室の扉を開ける。

 まるで、贈り物を取り出すように。

 目覚める事が限りなくありえないことでも、
 もし目覚めていたら、それは間違いなく私への贈り物。

 そのはずだった、でも、実際は……

 そんな気持ちを味わえなかった。

 扉を開けた先に広がっていたのは、見知らぬ女性が彼に口付けをしている現実。

 そして、彼は、
 目覚めた。目覚めてしまった。

 私では無い女の子の口付けで。
 

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